月曜朝礼の校長片岡先生の話②
【小学校のみなさんへ】
国立駅前の桜は、なんと3月13日に、今年最初の花がこぼれ咲きました。
年々早まる桜の開花。
原因として考えられるのは温暖化による春先の気温上昇でしょうか。
18世紀なかばの産業革命以来、石炭・石油といった化石燃料の使用や森林の減少などにより、大気中の、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの濃度が急激に増加したことで、世界の地上気温はおよそ1℃上昇している、そんな数字を聞いても、もう誰も驚かなくなっています。
2月17日に実施するはずだった月曜朝礼が、交通機関の乱れによって中止となりました。
その時用意していたのが、南極の話でした。
実は3月16日に行われた桐朋学園小学校卒業式でも、少しだけこの話を引用しましたので、みなさんにも読んでもらえたら、と思っています。
片岡 哲郎
「南極のきしむ音」(2020年2月17日)
みなさん、おはようございます。
昨日の日曜日は朝から雨模様で、気温も10℃そこそこでしたが、今日はぐっと暖かくなるようですね。
実は先週の水曜日から土曜日まで、東京の気温は連続して15℃を超えました。
この暖かさが4日も続いたのは、2月としては実に65年ぶりのことなのだそうです。
立春から春分の間に、その年初めて吹いた強い南風のことを「春一番」と言います。
厳密に言えば、日本海を進む低気圧に向かって、秒速8m以上の風が吹き込み、前の日に比べて気温が上昇する時にこの言葉が使われます。
先週の水曜日には四国の室戸岬で秒速20.4m、愛媛県で14.6mの南風が吹き、高松の気象台は四国に春一番が吹いたと発表しました。
そして昨日は富山で秒速19.8m、金沢で8.6mの風が吹き、新潟の気象台は北陸地方で春一番が吹いたと発表しています。
四国では昨年より7日早く、北陸では昨年より12日遅い春一番だったそうです。
今日はもしかしたら、関東でも春一番が吹くかも知れないということですが、どうでしょうか。
2月12日水曜日の夕刊が伝えていたのは、南極から届いた、季節の変わり目を告げるニュースでした。
日本の南極地域観測隊は、1957年に第1次観測隊が昭和基地を設立してから今日に至るまで、60年以上にわたって南極の観測を続けています。
昨年11月27日に出発した総勢88名の第61次南極観測隊は年末に昭和基地に到着し、氷河や地形などの観測、地震計などのデータ回収等のためにヘリコプターで南極各地を飛び回り、基地では輸送や建設などの作業に追われて来ました。
南半球にある南極の季節は、日本とは逆です。
1月は南極の夏にあたり、昭和基地の最高気温は2℃ほど、これは冬の札幌あたりと変わりません。
一方、8月の南極は真冬で、気温は-30~40℃に下がることもあります。
南極観測隊のうち、一年間南極で活動し南極の厳しい冬を越える越冬隊員は30名のみ、残りの隊員は“夏隊”としてこの2月4日で任務を終えて、南極を離れるのです。
夏隊とともに南極を去るのは、前の年に基地に入って一年間を過ごした第60次観測隊の越冬隊員31人。
昭和基地にはこれから61次越冬隊員の30名だけが残り、一年間の任務にあたることになります。
今回、南極の風景とペンギンに憧れて夏隊に応募した東北大学職員の樋口実佳さんは、一ヶ月間、基地に出入りする隊員の数を毎日把握し、食事数の調整や連絡などの業務に追われました。
彼女の頑張る姿を見ていた隊員たちは、樋口さんが基地を去る日に彼女を胴上げしたそうです。
第60次越冬隊員の藤田建さんは、気象関係のチーフとして自身3回目の越冬を終えました。
「日本に帰りたいという気持ちもあるけれど、いつかまた何か“忘れ物”をしたような気持ちになって、また来たくなってしまうんだろうな。」
と振り返っています。
南極は今、短い夏の終わりとともにそんな別れの季節を迎えたのです。
南極大陸は日本の国土の37倍、1,388㎢の広大な陸地の上に、平均1,856mの暑さの分厚い氷が乗っている、氷の大陸です。
2018年6月、ある学術雑誌は南極で-94℃という地球最低気温が記録されたと伝えました。
人間が数回呼吸しただけで肺が壊れてしまうような寒さです。
そんな氷の大陸に今、異変が起こっています。
2月13日、イギリスの新聞などが、南極半島北端のシーモア島で気温20.75℃が観測されたと伝えたのです。
「信じがたい」「異常だ」多くの学者がそう言って驚いています。
地球温暖化の影響が、南極を変えてしまうかも知れません。南極大陸のきしむ音が、聞こえてきそうです。
極端な話ですが、もし南極の気温が上昇して氷が全て溶けてしまったら…世界中の海面が今より60m近く上昇すると考えられています。
南極で今、何が起こっているのか、南極観測隊の活動は大事ですね。
○写真は、国立駅前(3月15日撮影)の桜です。