桐朋だより

めざせ ひきわけ

いよいよ明後日が運動会になります。

練習を重ねてきたみんながその全力を出しきることを心から願っています。

毎年この日、思い出す言葉があります。それはいまの6年生のある子が、2年生だったときに書いた言葉です。

「めざせ ひきわけ」

この言葉を見たときに書いた文章を、運動会をむかえるみんなへのエールしたいと思います。

 


 

クラスで、「今日のひとこと」という活動をしています。

その日の日直の子どもが、翌朝のクラスメイトに向けて、ひとことを贈るという活動です。

小さなホワイトボードに書かれたひとことは、黒板の真ん中に掲示され、翌朝登校した子たちが目にすることになるのです。

 

普段は書く内容を自由に日直に任せますが、その日は少し注文をつけました。なぜなら運動会前日だったからです。

「明日は運動会だから、なんか運動会についてのことを書いてくれるとうれしいな。」

この日の日直はAさん。まじめで優しい彼女は、僕のそんな抽象的な投げかけに、少し困った笑顔を浮かべていました。

 

子どもたちが帰ってから、Aさんが書いたひとことを見てみると、そこにはこう書かれていました。

「今日はうんどう会。めざせ ひきわけ」

それを読んだとき、大きな感動が押し寄せ、胸がいっぱいになりました。

 

きっと彼女はうんと考えて、これを書いたのだと思いました。

赤白対抗で行われる本校の運動会、クラスの子どもたちは半分ずつ赤と白に別れます。

つまり、クラスで半分の子は勝てますが、半分の子は負けることになるのです。

彼女は、クラスのみんな全員に勝ってほしくて、誰にも負けてほしくなくて、勝者と敗者にクラスを分けたくなくて、それでこれを書いた。

きっとそうだと思いました。

 

僕はこれまでこう考えていました。

1年に1回の運動会です。

普段は子どもに点数をつけたり、順位をつけたりしない学校ですから、その日くらいはしっかり勝敗をつけたっていいだろう。

勝って喜び、負けて悔しがる、そういう経験も大切だ。

そんな思いが僕にもありました。

 

でも、彼女はそうは考えなかったのです。

教室でともにすごすクラスメイト全員の喜びを考えた。

同じ教室で勝ち負けがつかないためにはどうなればいいか。

そしてこの言葉が生まれたのでしょう。

 

「めざせ ひきわけ」

ひょっとしたら賛否のある言葉かもしれません。

それでも、僕には思いつかない言葉で、彼女には生みだせた言葉で、とても美しく感じられました。

 


 

さあ、運動会本番です。

練習の成果が出せるよう、思いっきり力を出しましょう。

みんなのがんばりを大きな声で応援したいと思います。