桐朋だより

なぜ山に登るのだろう 5年生 奥蓼科林間学校後半

3日目、登山の日の朝は早く、5時半に起床です。

すぐに朝の準備と朝食を済ませて、7時前には天狗岳登山に向けて出発しました。

 

お宿から鉱泉の源泉を右手に見て歩いて5分。

すぐに山道に入っていきます。

30分ほど登ると、気づくと周りは苔むした緑、緑、緑。

自然のなかに身を置いていました。

うっそうとした木々の間から差し込む陽の光がその緑を輝かせました。

その美しさにうっとりと浸りたかったのですが、岩場の登り道はそれなりに険しく、だんだんと子どもたちも無口になっていきました。

山の入り口では「コイバナしよう」なんて言っていたのにね。

 

どれだけ歩いたでしょうか。

標高2400mにある山小屋黒百合ヒュッテにつきました。

ヒュッテに着くと、昨日のように入道雲が空にいばるように広がっているのが見えました。

きっと雷雲に変わるでしょう。

子どもたちの安全のため、今回の登山のゴールはここ、黒百合ヒュッテにすることにしました。

「頂上に行きたかった」そんな気持ちを抱くと同時に、それでも決して楽ではない道のりを乗り越え5年生みんなでここにたどり着いた喜びもたしかにあって、そんな矛盾する2つの気持ちを声に込めて、「やったー!」とみんなで雄たけびをあげました。

子どもたちのその姿を見ながら、私たちのゴールにたどり着いたことを喜びたい、心からそう思えました。

 

「私たちガイドにとっては、登りは野球に例えればまだ3回の表です。下りこそ安全に気をつけなければいけません。」

そんなガイドの豊田さんの言葉を頭に置きながら、下り始めます。

下りの中頃までくると、やっぱり雨が降り始めました。

雨に降られることを予想をしていたので、速やかにレインスーツを着込みます。

1時間ほどで雨が止むと、山の風景が変わりました。

雨上がりの山です。

「あのクモの巣を見て!」

指さす方向を見てみると、雨に濡れたクモの巣に、雨のしずくがいくつもついていて、それが射しこみ始めた木漏れ日に照らされ、美しく輝いていたのです。

「本当だ、きれいだね」

自然のなかに偶然あらわれる美しさを、誰かとともにできたときの喜びは、特別な気がするのです。

 

本校では山に登る行事が多くあります。

そのたびに子どもたちに聞かれることがあります。

「なんで山に登るの」

その答えをひとつでも見つけられていたらうれしいなあ。

そんなことを宿のお風呂に浸かりながら思いました。

 

夜のキャンプファイアーでは天狗に出会い、そして翌日は秋の土器づくりに向けて尖石考古館で縄文土器のスケッチをしました。

充実した3泊4日でした。