桐朋学園小学校

桐朋だより

1学期終業日 原口校長先生の話

梅雨明け間近の7月15日、本校では1学期の終業日を迎えました。

今回は、終業式での原口校長先生の話を紹介します。

 

 

みなさん、おはようございます。

いよいよ、1学期の終業日を迎え、明日からは、夏休みになります。

その一方で、4度目の緊急事態宣言が出されました。実際、感染の状況が悪化していて、いっそう注意が必要になっています。

熱中症と併せて、感染の予防にも、十分、心がけながら、夏休みを過ごしてほしい、と思います。

振り返れば、1学期は、ほぼすべて、緊急事態宣言・蔓延防止等重点措置の期間となり、「思う存分、学校生活を楽しむ」、といった感じには程遠い、そんな1学期だったように思います。

気分の晴れない日が続く中、毎日のように、明るく、爽やかな話題を届けてくれているのが、アメリカ、メジャーリーグ、ロサンゼルス・エンゼルスの、大谷翔平選手です。

昨日行われたメジャーリーグ・オールスターゲーム。史上初めて、二刀流での出場を果たし、残念ながら、ヒット・ホームランは出ませんでしたが、ピッチャーとして、160キロを超える剛速球を連発して、見事、1イニングを、三者凡退に抑え、勝利投手になっています。

今年の活躍ぶり、みなさん、ご存じですか。

バッターとしては、ホームランの数が、リーグでトップ、ピッチャーとしては、4勝を挙げ、9回まで投げたときに、いくつ三振を奪うのかを示す、奪三振率は、第4位という素晴らしい成績を残しています。

これほどの活躍に対し、アメリカでも、「野球の神様、ベーブ・ルースを超える存在」「史上最高の野球選手だ」などと、高く評価されています。

バッター、ピッチャーとしても活躍をする、二刀流の大スター、大谷選手。

このまま活躍が続くと、大谷選手をほめ讃える言葉は、この先、どんな表現になっていくのでしょう。この点も楽しみです。

しかし、今シーズン、開幕前の評判は、ずいぶんと違っていました。昨年の大谷選手は、ピッチャーでは2試合のみ、バッターとしても、これまでで最も低い成績で、試合にすら出られない日もありました。今シーズンが始まる前、エンゼルスの監督が、大谷選手を二刀流で起用すると話した時、アメリカのメディアでは、大谷選手への期待より、体調面を問題視する声が多く、「二刀流は、これがラストチャンス」という見方さえありました。

こうした前評判を覆し、活躍を遂げている理由について、いくつか、紹介します。

一つは、大谷選手本人の言葉として、次の点があります。「昨シーズンが終わってから、健康な体で、しっかりとトレーニングできたのが、良かったと思います」

二刀流のせいか、残念ながら大谷選手はケガが多いと感じます。

日本ハムの選手の時には、二度ケガをし、そのうち一度は手術が必要なほどでした。さらに、メジャーリーグでは、今年が4年目ですが、すでに二度、手術を受けています。

確かに、ケガは多いのですが、治療しながらでも、取り組める、トレーニングに励んだこと、さらに、今シーズン前の順調な調整により、メジャーリーグの、ピッチャーの球の速さに負けない、パワーがついた。こうした成長が、今シーズンの活躍に繋がっていると、評論家も指摘しています。

また、ケガや手術をどう捉えるか、この点に、大谷選手らしい考えが表れていて、結果として、活躍に繋がっていると感じます。

2018年、メジャーリーグ、1年目の秋に、右肘を手術した時、次のように話しています。

「100%の力を出せる状態じゃないまま、不安を抱えて、ピッチャーとして試合に出るのは、『しんどいな』と思いました。やっぱり100%で相手と勝負したいし、ケガがあり、十分ではない、このヒジの状態で、160km近くの、速いボールを投げられるなら、もしかして、ケガをしていなかったら、170km、出てたかもしれない、そんなことも思いました。

シーズン中、少し痛みがあっても、投げられるなら投げるというのは、プロなら、普通のことです。そう考えたとき、これから先、何年もの間、手術をせずに、このまま投げ続ける、というのも、一つの選択肢だと思いますし、それなりに、成績を残せるのかもしれません。

ただ、それが楽しいのかどうか、考えたとき、あんまり楽しそうじゃないなと思いました。」

 

「自分にとって、やりがいがあり、楽しいことなのか」大谷選手は、この点を大事にしています。

では、大谷選手にとっての、「楽しさ」とは、何でしょう。

レベルの高い相手にねじ伏せられた時、次は、どう対応するか、あれこれと工夫を重ねて、再び、挑戦する。大谷選手にとって、野球をする楽しみは、こうした点にあるようです。

 

先日、6年生のみなさんの、遠泳を見学しました。みなさんの中には、「泳ぎが苦手」という人もいたのだと思いますが、粘り強く努力をする中で、大谷選手の言う「楽しさ」を実践できた人もいるのではないでしょうか。

6年生のみなさんの、懸命な頑張り、やり遂げた、という達成感・充実感が伝わってきて、良い時間を過ごすことができました。6年生のみなさん、ありがとうございました。お疲れ様でした。

 

大谷選手の話を続けます。

成績がふるわなかった昨シーズンの後に、彼はこう語っています。

「良いところ、悪いところは、必ず毎年あります。良いところは、次に活かし、悪いところは、その分、伸びしろがあると思って、次に活かします」

発想の転換。不本意な結果でも、前向きに受け止め、切り替える。こうした力をもとに、大谷選手は、課題を克服しているのだと思います。

昨年、コロナのため、試合が行えなかった時期に、こんな発言もしています。

「僕一人の力で、コロナウイルスをなくすことなど、もちろん、できません。でも、たとえ、試合が無観客になったとしても、テレビで観ているだけで、胸が熱くなる、そんなプレーをすることは、自分にできる。だったら、そこに力を注ごうと思います。今、自分ができることをする、ということです。

『何事も自分の行動一つで変わっていく』、僕は、このことを、強く意識しているのです。例えば、相手の気持ちは、変えられないけど、印象を変えるために、自分ができることはある。自分の行動一つ、言葉一つ、態度一つで、ちょっとずつ、相手の感じる印象は、変わっていくかもしれません。相手の気持ちを変えよう、とするのではなく、相手の気持ちが変わるように、自分ができることをしよう、ということです」

 

大谷選手は、こんなことも言っています。

「僕は、他人(ひと)が、ポイって捨てた運を拾っているんです」

運とは、ゴミのこと。メジャーリーグでも、グラウンドのゴミを拾う、大谷選手の姿が報道され、大きな話題になっています。

 

コロナによって、いつものように、生活ができない日々が続いています。そうした日々に、どう向き合うのか、どのように取り組んで行くのか。大谷選手の活躍に励まされながら、大いに刺激を受けています。

緊急事態宣言の下での夏休み。1学期と同じく、「やりたいことを思う存分できる」、そんな夏休みとは、違うのかもしれません。

それでも、前向きな気持ちに切り替える、こうした発想の転換によって、少しでも楽しく過ごせるよう、自分ができること、すべきことを見つけ、精一杯取り組んでほしいと思います。

 

最後に、もう一つ、大谷選手の言葉を紹介します。こちらです。見えますか。

「期待とは、応えるものじゃなく、超えるものだ」

大谷選手、本当にたくましいですね。

 

この夏で、一回り大きく成長したみなさんと、9月に会えることを、心より楽しみにしています。良い夏休みを過ごしてください。これで、今日の話を終わります。

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