月曜朝礼 校長片岡先生の話⑥
【小学校のみなさんへ】
桜の頃は、毎日よいお天気に恵まれましたが、ここにきて何度か雨が降っています。先生は月曜朝礼でしばしば、二十四節気のお話をしますね。昔の暦では、一年を24分割した、それぞれの季節を24の言葉で表しました。昨日の4月19日はそのなかの「穀雨」という節目にあたっていました。この時期までに穀物の種を蒔いておくと、春の雨がそれを潤し、育ててくれるのです。ちなみに次の季節の節目はもう「立夏」、暦はすでに晩春にさしかかっています。
お休みの日が続くなか、何となく生活のリズムが乱れがちになっている人もいるかと思います。学校がある日は自然に早起きができていたのに、最近はときどき朝寝坊をしちゃうことがあるな、と思い当たる人はいますか?朝寝坊の言い訳に、「春眠、暁を覚えず」という言葉がよく使われます。今日は、なんだか夢うつつな春の朝のお話です。
片岡 哲郎
プレイバック月曜朝礼⑥
「夢のはなし」(2013年4月15日)
みなさん、おはようございます。新しい2013年度が始まって、最初の月曜朝礼ですね。またよろしくお願いします。
さて、世の中は今、春の盛り。晴れた日などは特にポカポカして、本当に気持ちが良いですね。中国・唐の時代と言いますから、今から1300年も昔、孟浩然という詩人がいました。彼は、偉い役人になるための国家試験を何回も受けて失敗し、失意のうちに故郷に帰って隠れるように生きた人ですが、彼の遺した詩には、1300年たっても色あせない、すばらしい作品が多くあります。この時期は特に、「春暁」(あかつき=夜明けに東の空が白み始める頃)という作品がよく紹介されます。少し難しいですが、読んでみましょう。
「春眠暁を覚えず/処々(しょしょ)に啼鳥(ていちょう)を聞く/夜来(やらい)風雨の声/花落つること知りぬ多少ぞ」
今の言葉でやさしく言えば、「春の眠りは気持ちが良くて、目が覚めたのは夜が明けてからだ。目覚めるともう鳥があちこちで啼いている。そう言えば昨夜は風雨が強かったようだ。花も多く落ちてしまったことであろう。」という意味になります。このところ何日か、こんな朝があったような気がします。
人間の脳は、活動する時に弱い電気を発生させます。この電気を測定し、ギザギザの波のような形で記録する装置のことを脳波計と言います。そこから、脳が発生させる電気そのものを脳波と呼ぶようになりました。普通に考えれば脳波は、人間が起きている時に発生し、寝ているときにはあまり発生しないように思えますね。1957年、シカゴ大学のクライトマンと、アゼリンスキーという二人の学者が、ある発見をしました。それは、人間が夢を見ている時に、目玉を盛んに動かしていることです。この時の睡眠をレム睡眠の状態というのですが、この時に脳波を調べると、起きている時と同じくらい活発に、脳は活動しているそうです。普通、人は一晩に5回ほどこのレム睡眠の状態になるので、つまり一晩にだいたい五つの夢を見ていることになります。面白いことに、レム睡眠の状態の時にその人を急に起すと、8割くらいの人は、今見ていた夢の内容を話せるのだそうです。
夢のことについて、先日、京都にある国際電気通信基礎技術研究所という機関が、興味深い研究報告をして話題となりました。この研究所では、3人の男性を眠らせては起こし、どんな夢を見ていたかを話してもらってそれを聞き取る、その実験を200回以上も繰り返しました。この夢の内容を、例えば「車」とか「本」とか「女性」といった60種類に分類し、その画像を男性が起きている時にもう一度見せてその時の脳波のパターンを分析し、それを眠っていたときの脳波と比べてみる、そうすると約15種類の夢に関しては、夢を見ている時の脳波と起きて画像を見ている時の脳波とが、約7割の確率で一致したというのです。わかりやすく言えば、ある人が寝ている時に脳波を測定すれば、その人が見ている夢の内容がわかる(ようになるかも知れない)という実験結果なのです。本当でしょうか。
「天狗裁き」という落語があります。寝言を言っていた八五郎が奥さんに起され、どんな夢だったか聞かれます。思い出せない八五郎は、「夢なんて見てない」と言って大喧嘩になります。かけつけた近所の人たちも、夢の内容が気になって問い詰め、また喧嘩になる。仲裁に入った大家さんも、お奉行様にも夢を聞かれ、ついに天狗にさらわれて山の中へ連れて行かれ、そこでも夢を問い詰められ、答えられない八五郎が思わず「助けて!」と叫んだところで目が覚めます。すると奥さんが「どんな夢を見てたの?」
夢は不思議なもの。自分でも見ていた夢が思い出せないのが普通です。自分が寝ている時に、夢の中身を覗かれるというのはちょっと困りますね。
※ 穀雨の正門広場。みやばやしのながめはひと月のうちに、すっかり変わりました。