「このにおいは何なの」
ろうかを歩く3年生が顔をしかめながら大きな声で言いました。
たしかに、今日は実習室からなんとも言えない青っぽいにおいがたちこめています。
「ああ、今日は羊の毛を染める日なんだ」
においで何をやっているかがわかるなんて、さすが6年生。
そうです。この日は4年生が草木染めで羊の毛に色をつける日なのです。
5月の西湖湖畔学校で4年生は羊の毛を自分の手で刈りました。
それを洗ってカーディングでとかして、さらには糸つむぎをして、毛糸を作ったのです。
ついこの間、その手作りの毛糸に媒染材(ばいせんざい)をしみこませました。
これにより毛糸に色がつきやすくなり、さらに色が落ちにくくなるのです。
この媒染材をしみこませるときも独特のにおいが校舎に広がりました。
この日はその媒染材のしみこんだ毛糸に、校内の樹々の色をつける日です。
樹々から集めた葉を煮込んだものに毛糸をつけていきます。
にこめばにこむほど凝縮された葉のにおいが周囲にたちこめていきます。
においをかき分けながらホーロー鍋のなかを見ると、毛糸が色づいてきているように見えます。
たっぷり時間をとったらいよいよ毛糸を取り出します。
深い緑の葉を使ったはずが、できあがりがピンクに染まることも。
媒染材と葉の組み合わせの不思議さです。
さあ、このあとは織りです。
織り器も手作りで、毛糸を織物にしていきます。
羊の毛の旅はまだまだ続きます。

